パニック障害とうつ病の関係
パニック障害とうつ病は近い関係にあるといわれます。併発することも多いですが、その場合やっかいなのは、重症になりやすいこと。症状が重くなると、性格変化も起こります。
うつ病を併発すると重症化する
①どちらの病気にも、同種の薬が使われる。
②パニック障害患者の家族には、うつ病の人がかなりみられる。
③パニック障害の人の60%は、生涯のうちいつかはうつ病を経験する。
こういった特徴からみても、パニック障害とうつ病は近い関係にある病気だと考えられています。
●大部分は非定型うつ病
パニック障害に併発するうつ病は「パニック性不安うつ病」と呼び、ふつうのうつ病とは区別して考えます。いわゆるうつ病(定型うつ病)ではなく、大部分は、非定型うつ病の特徴を示すのがその理由です。
また、多少なりとも躁状態をともなう躁うつ病(双極性障害)を併発する人も20~25%みられます。注意したいのは、典型的な非定型うつ病の症状があらわれず、軽いうつ状態が続くケースです。本人も周囲の人も、医師でさえも気づかないことがあります。早く発見して、適切な治療を受けることが重要になります。
●自殺の危険性が高まる
パニック性不安うつ病では、非定型うつ病の特徴である気分反応性や過食、過眠、鉛様麻痺などがみられますが、特に気をつけたいのが「不安・抑うつ発作」です。
パニック障害は、他の精神障害とくらべ自殺は少ないとされます。しかしうつ病を併発すると、自殺の危険率はぐんと高くなります。リストカットなどの問題行動が多くなるのは、この不安・抑うつ発作があらわれているときです。
●うつがまねく「性格変化」
パニック障害の人の性格変化は、うつ病を併発し、それが重症化したときに多くあらわれます。パニック発作の不安や恐怖は、並大抵のものではありません。それがくり返し起こると、心は休まる間もなく、うつにおちいっていきます。そうして拒絶過敏性」が高まり、あるラインを超えたとき、攻撃的になる、キレやすい、自己中心的になる、といった性格変化があらわれるのだと思われます。
しかし家族など周囲の人は、それが病気のためと考えず、患者さんをうとんだり憎んだり、やっかい者扱いをするケースもみられ、患者さんには二重の苦しみになります。
●うつの多くは慢性期にあらわれる
うつ病は、パニック障害の経過のなかで、前駆期から急性期にかけてあらわれることもありますが、これはそれほど多くはありません。
多くなるのは、パニック障害が慢性期に入ってからです。広場恐怖や回避行動のためできないことばかりで、生活を楽しんだり、ものごとに打ち込むエネルギーが少なくなり、うつ病を併発します。
パニック障害の発作や症状の推移
●前駆期=軽い症状
最初のパニック発作が起こる前に、前兆のような症状があらわれることがあります。発作の数時間前から、半年前くらいまでさかのぼってみられます。少し息苦しい、軽い動悸、めまい、意識がうすれるような感じなど、ごく軽い形であらわれます。
●急性期=パニック発作が頻発
パニック発作は、急性期ではひんばんに起こります。大半は、週に3~7回ほど。重症の場合は、1日に何度も起こることもあります。1週間に4回以上発作が起こり、しかもその発作が4週間以上続く場合は重症と考えられます。発作は、慢性期には少なくなります。
●慢性期=うつ状態が強くなる
発作が減ってきても、予期不安や広場恐怖・回避行動は残ります。やがて、うつ状態やその他の不安障害などがあらわれるようになります。
●残遺症状(非発作性愁訴)
発病して半年から数年が経過すると、残遺症状があらわれてきます。はっきりした発作ではなく、なんとなく調子が悪い状態が続きます。