「非定型うつ病」とは?
うつ病と診断されている人のうち、非定型うつ病は3~4割。軽い躁うつ病(双極性障害Ⅱ型)にしぼると、実に6割近くが非定型うつ病という調査結果が出ています。
非定型うつ病
その後、研究が進み、精神疾患の診断マニュアルDSMでは、第四版(1994年発表)になって初めて記載されました。このように、非定型うつ病は病気として認められたのが最近なため、まだ正しい診断が行われていないというのが実情です。たとえば、非定型うつ病の研究が日本より進んでいる欧米でも、定型うつ病については74%の医師が正しく診
断していますが、非定型うつ病をきちんと診断できた医師は34%にすぎないという報告もあります。
日本でも、単に「うつ病」と診断されている患者さんはかなりみられます。こういった場合、行われるのは定型うつ病向けの治療ですが、それでは非定型うつ病はなかなかよくなりません。さらには、うつ病以外の病名がつけられることもあります。境界性パーソナリティ障害、心因反応、抑うつ神経症、ヒステリーなどです。
誤った診断のもとで、治療がうまくいっていない患者さんのなかには、非定型うつ病の人がかなり含まれるのではないかと予測されます。非定型うつ病は、時代とともに増えてきていると考えられます。
非定型うつ病は特殊な病気ではない
この調査によると、大うつ病患者の中の非定型うつ病は31%、一般市民では25%という割合でした。また、軽症の躁うつ病( 双極性障害Ⅱ型)の人を対象にした調査もあり、全体の58%が、実は非定型うつ病だったという興味深い結果も出ています。
ただし、軽いうつ状態が慢性的に続く 気分変調怪障害を対象とした調査は、まだありません。非定型うつ病は、むしろ気分変調性障害の人により多くみられますので、今後調査が進めば、さらに高い割合を占めると予測されます。
実際に臨床にたずさわる医師からは、全うつ病の4割前後が、診断基準を満たす非定型うつ病で、診断基準は満たさないものの、非定型うつ病的な状態にある人を加えると、6割前後に上る、という声も聞かれます。非定型うつ病は、ごく一部の人にみられる特殊な病気ではないといえます。