躁うつ病
うつ病の治療を続けていたら、回復したと思われる時期に急に操の状態になり、実は躁うつ病だったということがありますので、躁うつ病の症状や対応についても知っておく必要があります。
躁うつ病とうつ状態が交互に
「内因性のうつ病」には、うつ状態だけのもの(単極性のうつ病)と、うつ状態と躁状態が交互にあらわれる躁うつ病(双極性障害)とがあります。ここでは躁うつ病の、症状から治療までを、まとめて紹介していきます。
躁うつ病の症状
躁うつ痛は、うつ状態と躁状態の症状を繰り返すタイプのものです。うつ状態のときの症状は、通常のうつ病の症状とほとんど同じです。それでは、躁状態のときの症状はどのようなものでしょうか。主な症状は以下ようなものです。
・気分が高揚して、陽気になる
・気分が爽快になる
・活動的になり、ほとんど眠らずにものごとに熱中する
・多弁で早口になる
・話の内容が、全体としてまとまりがない
・次々にアイディアがわいてくるが、考えも次々に変わっていく
・自分はえらいと思い込み、態度が尊大になる
・感情が不安定で、ささいなことに泣いたり、怒ったり、感激してしまう
・自分の気持ちが抑えられなくなる。このため攻撃的になり、暴力をふるったりする
・自分勝手になる。他人の権利を平気で無視したり、社会の規範を破ったりする
・誇大妄想のようなことを言う
・血統や宗教にかかわるような妄想をいだく
自分が能力のある人間だと思い込んでしまうので、周囲の人が無能に思え、対応もえらそうになります。部下をどなりつけたり、上司とけんかをしたり、とんでもなく大きな取引を勝手に決めたりしてしまいます。気前がよくなって、高価なものを買ってしまったり、莫大な借金をしてしまうこともあります。
また、けんかも多くなります。まわりの人々の気持ちなどは一顧だにしないため、人間関係もどんどん悪くなっていってしまいます。しかも、こうした問題を起こしても、ほとんど自分が病気であることを自覚していませんから、始末に負えません。言ってみれば、自分の言動にまったくブレーキがきかない状態になってしまうのです。このため、家族をはじめまわりの人は、完全に振り回され、疲れ果ててしまうことになります。
躁うつ病の原因
発症の年齢は、比較的若い年齢層が多いようです。原因については、従来の「内因性のうつ病」の観点からいうと、原因はわかりませんが、環境やストレスなど外部からの影響がなく、体の内側から起こるとされています。遺伝的な体質もひとつの要素ではありますが、遺伝病ではないので、こうした体質を持っているからといって、躁うつ病になるとはかぎりません。
躁うつ病の診断と治療
というのも、心身ともに高揚した状態、つまり躁状態だけが長く続く「躁病」がありますが、日本ではうつ病や躁うつ病にくらべると、それほど患者数は多くはないからです。これに対して、うつ状態から始まったケースでは、うつ病なのか、躁うつ病なのかという判断はたいへんむずかしくなります。うつ病として治療を続けていた人が、だいぶ改善してきたと思われたとき、急に躁状態に変わることがあるのです。そのときになってはじめて、躁うつ病であったというケースもありえます。
入院が必要な場合
なお、躁状態が似ているほかの病気としては、統合失調症や非定型精神病、甲状腺機能亢進症などがあり、区別がむずかしく、医師は慎重に診断し対応することになります。
躁うつ病の治療は、休養と薬が基本となります。患者の躁状態があまりにも強すぎる場合には、医師が入院をすすめるケースも出てきます。入院させることで、十分に休養させることばかりでなく、患者に前述のようなトラブルを起こさせないようにすることができます。また、家族が振り回されて、対応に疲れ果ててしまわないようにするためにも、入院は必要な措置といえます。
躁うつ病の治療薬
治療薬は、炭酸リチウム(商品名・リーマス)が中心となります。吐きけや下痢などの副作用はありますが、躁状態の治療にはたいへん効果があります。このほか、カルバマゼピン(商品名・テグレトールなど)やパルプロ酸ナトリウム(商品名・デパケンなど)など、てんかんの治療薬も使われます。医師は、患者の症状をみながら、こうした薬を処方していきます。むずかしいのは、一方の症状からほかの症状に移るときや、両方の症状が同時にみられる混合状態のケースなどです。こうした場合の薬の処方にあたっては、医師は慎重に患者の状態をみながら対応していくことになります。
躁うつ病は、きちんと薬物治療を行っていれば、一般的には数カ月で治ります。ただし、注意しなければならないのは、躁うつ病はたいへん再発しやすいということです。再発予防には、炭酸リチウムを中心とした薬をかなり長い期間、飲み続けることが、最も効果的といわれています。これを維持療法と呼んでいます。