パニック障害の原因について
脳にある危険を察知する装置が敏感になりすぎて、誤作動を起こし、警報を鳴らしてしまう…。パニック障害は、脳の機能障害による病気という説が有力です。
パニック障害の原因
パニック障害の発病のメカニズムについて、すべてが解明されたわけではありませんが、最近は研究が進み、いくつかの原因説が出てきました。
●脳が「誤作動」を起こす
私たちの脳には、危険が迫ってきたときなどにそれを察知して、警告を発するしくみがあります。その中枢は、脳の大脳皮質です。そこから指令が出されると、脳の各領域では、危険なものから逃げたり、敵と戦ったりするための準備をします。なかでも、扁桃体(大脳辺縁系の一部)は重要です。扁桃体は情動の中枢で、ここが危険を察知して恐怖感が呼び起こされると、その恐怖感は青斑核をはじめとする脳幹部の自律神経中枢核へと伝播していきます。
そこで青斑核では、ノルアドレナリンを放出し、筋肉に血液を送り込んで心拍を遠くしたり、血圧を高めたりします。ノルアドレナリンは、心身に危険を知らせる警鐘のような役割をします。ところが、この警報装置は、敏感で不安定なため、誤って作動することがあります。まわりに危険がないのに、扁桃体が過敏に働いてしまいます。扁桃体が異常に興奮すると、それが自律神経を刺激して、めまいや動悸などのパニック発作を起こします。その影響は 大脳辺縁系(生きるための本能や感情をつかさどる部分)や、 前頭葉(ヒトとしての精神活動の中枢)にまで及び、予期不安や広場恐怖が起こってくると考えられています。
●神経伝達物質の影響
神経伝達物質には、脳の神経細胞の間を行きなります。来して情報を伝達する働きがあります。パニック障害に影響を与えるのは、以下のような物質です。
ノルアドレナリン…興奮性の物質で、不安や恐怖とも深く関係します。パニック障害は、このノルアドレナリンが過剰になったために起こると考えられています。なお、定型うつ病では反対に、ノルアドレナリンの働きが極度に低下するとされます。
セロトニン…不安を抑え、平常心を保つように働きます。パニック障害では、脳内のセロトニンが不足していたり、セロトニンに感応する神経の働きが弱くなっているため、病気が起こると考えられています。また、定型うつ病でも、セロトニンの働きが極度に低下することがわかっています。
ギャバ、ベンゾジアゼピン…ギャバは、不安を抑える働きがある神経伝達物質で、ギャバ・レセプターとベンゾジアゼピン・レセプターはつながっているため、ベンゾジアゼピン・レセプターが刺激されると、ギャバ・レセプターの作用が高まり不安がおさまります。そのため、パニック障害は脳内のギャバーベンゾジアゼピン・レセプターの感受性に問題があって起こるという説もあります。
●受容体が過敏になる
脳内にある、炭酸ガスを感知する受容体(レセプター)が過敏になって起こるという説です。レセプターが過敏になっていると、脳内に炭酸ガスが少し増した程度でも、過剰になっている、酸素が不足していると脳が誤解して、窒息感が上昇し、呼吸困難などの発作が起こるというものです。