非定型うつ病の症状(気分反応性)
よいことがあれば気分がよくなったり、ささいなことで落ち込んだり…。この激しい「気分反応性」こそ、非定型うつ病の基本症状。気分屋と誤解されますが、これも病気のせいなのです。
「気分反応性」は非定型うつ病の基本症状
たとえば、だれかにほめられる、親しい友人とおしゃべりをする、好きなテレビ番組を見る、趣味の音楽を楽しむ、欲しかったものが手に入るなど、自分にとって好ましいできごとがあると、非定型うつ病の人は、うつ症状が軽くなったり、消えたりすることもあります。
定型うつ病の人が、まわりにどんなことがあっても、いつもうつうつとして楽しまず、沈んだ様子でいるのとは対照的です。
その一方で、この気分反応性は逆方向にも作用します。少しでもいやなことがあれば、気分がふさぎ、落ち込みます。はたからみれば、ごくささいに思えることでも、本人は激しく反応します。気分反応性は、非定型うつ病を特定するときの基本症状で、診断基準には「好ましいことがあると気分がよくなる」ことが第一条件になっています。しかし、実際の臨床の場では、逆方向の「ささいなことで激しく落ち込む」患者さんのほうがより多くみられます。
非難をするのは逆効果
その一方で、いやなことや都合が悪いことがあると、てきめんに体が鉛のように重くなったり( 鉛様麻痺)、眠くてしかたがない ( 過眠)といった症状がひどくなり、不活発になります。なんと自分勝手な、わがまま人間だと思うかもしれません。事情をよく知らない人は、自分の都合がよいように、わざとやっているのではないかと誤解したり、冷たい目でみることもあるかもしれません。しかし、この気分反応性こそ、病気のなせるわざ。本人は、自分の意思でやっているわけでなく、病気が「そうさせている」と考えてください。
自己中心的だと非難するのは、かえって逆効果です。というのも、非定型うつ病は「感情の病気」です。感情が非常に過敏になりますから、プライドが傷つけられるような言葉には激しく病的に反応します。非難したり、責めたりするのは、患者さんの感情をいたずらに刺激するだけです。症状はますます悪化します。それよりは、本人の気分が落ち着いたころを兄はからい、「はたからはこのようにみえる」と、第三者的に客観的なアドバイスをするようにしましょう。