うつ病の再発(きっかけ・注意点)
うつ病は、再発しやすい病気です。治ったからと油断せず、このことをしっかりと
頭に入れ、再発しないように日ごろから注意することが大切です。
治ったかどうかの判断は大変難しい
うつ病の場合は、治療によって症状も徐々に改善されていきます。しかし、回復期では、また症状が悪化する可能性があります。治ったかどうかは、患者自身が勝手に判断するようなことではありません。自分で治ったと思い薬をやめてしまう人もいますが、これは厳禁です。うつ病では「治った状態」になっても、再発を防ぐために、しばらくは服薬を続ける必要があります。
「すっかりよくなった」と思っていたら、躁状態になってしまい、結果として双極性障害(躁うつ痛)だったというケースもあります。このように、うつ病が治ったかどうかの判断はたいへんむずかしく、医師でさえ慎重に判断するくらいですから、くれぐれも患者自身だけの判断で薬をやめたり、通院をやめてしまうようなことは絶対にしないようにしてください。
再発予防に注意する
うつ病が再発しやすい病気であることは事実です。そう聞くと、「せっかく治ったと思ったのに」と、気が重くなる人がいるかもしれませんが、まずそのことをしっかりと頭に入れておく必要があります。一度治ってしまうと、患者も病気だったころのつらさなどすっかり忘れてしまい、再発予防にまったく無関心になる人がいます。家族もほっとしてしまい、再発のことをつい忘れがちです。しかし、油断は禁物だということを、くれぐれも肝に銘じてください。では、どのようなときに再発してしまうのでしょうか。そのいくつかの例を以下に紹介していきます。
●予防のための薬をやめてしまう
毎日決められた時間に薬を飲むのが面倒になっていたところに、治ったと聞くと、「もう薬はいいだろう」と思ってしまうのも無理はないかもしれません。しかし、薬を急にやめてしまったために再発した例は非常に多いのです。短絡的に「治ったのだから、もう薬は必要ない」と思うのは、うつ病ではいちばんよくないことです。
うつ病の場合は、一度治っても、再発を予防するために、長期にわたって薬を飲み続けることが一般的です。いつ、どんなときに再発するかについては、まだまだわからないことが多いとされていますので、必要最低限の予防策として、ある程度の期間、薬を飲み続けることが大切になってきます。予防のための薬については、その患者に最も効果があった抗うつ薬を最少量飲み続けるという方法があります。また、躁状態を治療する薬である炭酸リチウムも、再発予防に効くことがわかっており、よく使われています。
このほかにも、てんかんの治療薬であるカルハマゼピンなども使われます。再発予防のためにどの薬を使うかは、医師によって違うようです。また、その薬の量についても多少異なります。治療のときと同じように、医師は経験と知識を生かして、その人に最も適切な薬と量、そして飲み続ける期間を決めていきます。薬を飲み続ける期間については、はっきりと決まっているわけではありませんが、1年くらいは続ける必要があると考える医師が多いようです。また、予防のための薬を飲み続けることで、仮に再発しても症状が軽くてすむということもあります。
●急激な変化がきっかけに
親しい人との死別や離別、失恋や結婚、就職、人事異動、引っ越しといった、自分をとり巻く環境の変化は、うつ病になる要因のひとつであると同時に、再発の引きがねともなります。なので、治ったからといって、環境の急激な変化などに対して無防備でいてはいけません。そうした急激な変化がある可能性を前もってきちんと把握せず、なんの準備もしないままに直面したために、再発してしまうことがよくります。
●疲労の蓄積がきっかけに
治ったと思い、つい仕事にがんばってしまう人も多いようです。しかし、休んでいた間の遅れをとり戻そうとか、残業を断りきれずに働きすぎてしまうなど、無理をしたことで疲れがたまり、再発する例も多いです。
●家族や周囲の理解不足
うつ病が治ると、本人だけでなく家族や周囲の人も安心してしまって、再発に無関心になることがあります。医師から、うつ病が再発しやすい病気であることを知らされていながら、そのことを忘れてしまい、再発させてしまうことがあります。
うつ病の再発の危険因子
一般的特徴 | ●過去に2回以上のうつのエピソード (特に過去2~3年間にうつ病の既往がある場合、再発率は85%) ●現病相の重症度あるいは慢性化 ●生活状況変化(職業上、家庭内) ●うつ(症候性、気分変調を含む)の慢性化の既往 ●定型的気分障害の家族歴、高齢、反復性短期うつ病性障害 ●共存疾患 |
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心理社会的因子 | ●夫婦間不和、対人関係問題 ●結婚していないこと(離婚、死別を含む) ●社会的支援のとぽしさ、経済的困窮 ●境界性人格障害、依存性人格障害、回避性人格障害など |
不十分な薬物治療 | 患者側の要因 ●有害作用、服薬のわずらわしさ ●病気への否認的態度 ●薬に関する誤った情報 医者側の要因 ●単極性うつ病についての誤解 ●患者への教育を怠る ●長期投与への躊躇 ●性格面の強調しすぎ |