心身症について
心の病気の中には、うつ病とよく似ている病気があります。医師は診断にあたっては、うつ病なのか他の心の病気なのか、慎重に判断することになります。うつ病と症状が似た病気である心身症について紹介します。
心身症は体の病気
身体症状を示す「 仮面うつ病」などと混同されやすいのですが、心身症は心の病気ではなく、あくまでも体の病気であるという点が大きく異なります。ですから、たとえば、胃が痛いという訴えがあっても、うつ病の場合は検査をしてみても体の異常は見つかりません。これに対して心身症では、検査で胃の異常が発見されます。繰り返しますが、心身症は心の病気ではなく、あくまでも体の病気なのです。
心身症との関連で考えられる病気について
生活習慣病の代表とされている高血圧や心臓病、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病なども、それがストレスが原因で起きた場合には心身症ということができます。たとえば、仕事がうまくいかず悩んだり、家庭内のもめ事で悩んだりしているときに、高血圧や冒・十二指腸潰瘍が起こってくるケースなどが典型的です。
心身症との関連で考えられる病気は、かなりたくさんあります。しかも、循環器系、消化器系、呼吸器系、内分泌系、神経系、さらには皮膚科や耳鼻科の領域まで、かなり広い範囲に関係しています。通常、健康は、内臓などを動かす「自律神経系」、消化液やホルモンなど分泌液をコントロールする「内分泌系」、外から侵入してくる異物などから防御する「免疫系」のバランスが保たれることで維持されています。ストレスなど強い心理的な刺激を受けると、これらの機能をつかさどる脳の視床下部の機能が乱れ、その結果、体にさまざまな障害が起こってきます。
心身症の治療について
医師は患者と話しながら、心身症の発症の原因となった心理的な問題に患者が気づくようにしていきます。患者がその問題点に気づくことが、回復や再発防止につながっていきます。このほかの精神療法としては、自分自身に暗示をかけることで心身をリラックスさせたり、不安や緊張をほぐす「 自律訓練法」や、人間関係の交流のあり方を分析して心の動きなどを考え、対人関係を改善していく「 交流分析」などが行われることもあります。
心身症と関連して考える必要がある体の病気
循環器系 | |
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呼吸器系 | ●気管支せんそく●過換気症候群●神経性せき●しゃっくりなど |
消化器系 | ●消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)●慢性胃炎●胃下垂●過敏性腸症候群●潰瘍性大腸炎●胆道ジスキネジー●慢性膵炎●慢性肝炎●神経性嘔吐●発作性腹部膨満感●神経性腹部緊満症●呑気症●食道けいれんなど |
内分泌系 | ●単純性肥満症●糖尿病●甲状腺機能元進症●神経性食思不振症●貧食症●心因性多飲症など |
泌尿器系 | ●夜尿症●インポテンツ●神経性頻尿(過敏性膀胱)など |
神経系 | ●片頭痛●筋緊張性頭痛●自律神経失調症など |
骨筋肉系 | ●慢性関節リウマチ●全身性筋痛症●書痙●痙性斜頸●むち打ち症●チック●外傷神経症など |
皮膚科領域 | ●慢性じんま疹●神経性皮膚炎●皮膚そう痺症●アトピー性皮膚炎●円形脱毛症●多汗症●湿疹など |
耳鼻科領域 | ●メニエール症候群●アレルギー性鼻炎●慢性副鼻腔炎●咽喉頭異常感症●乗り物酔い●心因性嗄声●矢声 ●吃音など |
眼科領域 | ●原発性緑内障 ●眼精疲労●眼瞼下垂●眼瞼けいれんなど |
耳鼻科領域 | |
産婦人科領域 | ●小児ぜんそく●起立性調節障害●再発性臍疝痛●周期性嘔吐症●心因性発熱●チック●夜驚症など |
小児科領域 | ●腹部手術後愁訴(いわゆる腸管癒着症)●ダンピング症候群●頻回手術症(ポリサージェリー)●形成手術後神経症●口腔手術後神経症など |
口腔領域 | ●顎関節症●口内炎●特発性舌病症●歯ぎしり●口臭症●唾液分泌異常●精神性脳貧血●義歯神経症●咳筋チック●口腔手術後神経症など |